夏の魚といえば鰻。そして新子。美しい日本料理の「物語」

神田で日本酒に合わせた日本料理を気軽に楽しめる神田わだつみです。

四季折々の魚料理を楽しめるのは海洋国家の日本ならでは。
神田わだつみでは、旬の魚料理を提供しています。

魚の旬と呼ばれる時期は、主に産卵前です。
というのも、魚の美味しさは魚が体にためた栄養で決まるからです。
産卵には体力をつかうので、魚が必死になって体に栄養を蓄えます。

しかし、日本料理は「舌」だけで味わう文化ではありません。
「物語」もふまえることでも味わおうとする文化です。

旬を外した魚の味わいも、日本料理の楽しみなのです。

今回は、旬ではないのだけれども、「物語」をふまえるとさらに美味しい日本の魚料理を紹介します。
「花はさかりに月は隈なきをのみ見るものかは(徒然草)」の言葉を感じる美しさを感じてもらえればと思います。

江戸時代の医学ブームが生み出した「土用の丑の日」

夏といえば「土用の丑の日」の連想から、鰻を夏の魚として思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし鰻の旬は夏ではありません。
鰻の旬は冬です。

ではなぜ「土用の丑の日」に鰻を食べることが、今も続くほどの日本食文化になったのでしょうか。
そこには江戸小話になりそうな、江戸町人の知恵がありました。

「土用の丑の日」を考案したのは平賀源内という説が一般的です。
平賀源内といえば、「エレキテル」の発明で有名ですね。
彼が江戸の鰻屋さんに「鰻の旬は冬だけど、夏にもっと売りたい」というような相談をされたところ、
「鰻は精がつくから、疲れやすい夏に食べるのがよい」という売り文句を考えました。
そのキャッチコピーとして「土用の丑の日」が考え出されたのです。

しかし、「冬が旬の魚を夏に売る」という「白を黒に」のような無茶苦茶な考えが、なぜ頑固な江戸っ子に受け入れられたのでしょう。

その理由には、当時の医学ブームがあるかもしれません。
平賀源内が「エレキテル」で有名になった安永(1772年ごろ)には、かの「解体新書」には刊行されました。
人体内部を詳細に記した「解体新書」は江戸に大きな衝撃を与えました。
医学ブームが起きていた可能性もあります。

医学に対する社会的な関心の高まりが、健康への関心も高めた結果、「健康のために鰻を」という考えが受け入れられたのかもしれません。

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神田わだつみでも、夏には鰻をかば焼きで提供しています。
正直に言うと日本産ではありません。中国産です。
しかし中国産のほうが鰻らしい脂の乗りでは勝っています。

また神田わだつみは、気軽に日本料理を食べながら、日本酒を飲むことをおすすめしています。

そのため、しっかりとした味わいのある鰻のほうが、酒のつまみにはちょうどよいと思っています。
お手頃価格なので、幅広いお客様に提供もできます。

屁理屈のようなキャッチコピーが生み出した日本文化が今も継承されていることには、運命の美しさを感じます。
すごいことだとも思います。「土用の丑の日」を続けていくためにも、多くの人に鰻を食べてもらいたいと思っています。

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神田わだつみでは、鰻のかば焼きに「有馬山椒」を添えています。
「有馬山椒」は、山椒を甘辛く煮たものです。
煮るために用いるのは主に砂糖と醤油。
シンプルな調理法ですが、甘みと辛みのバランスが難しくなっています。
神田わだつみは、全体的に関東風の味付けなので、ちょっと甘めにしています。
味のバランスが難しい料理のバランスをあえて崩しているのが、美味しさの秘訣です。

山椒の実を噛みつぶすと、涼やかな風味が鼻をぬけ、鰻の脂のしつこさを和らげてくれます。
甘辛く煮ているので、鰻のタレとの相性も抜群です。

魚だけでなく技も光る新子の握り寿司

コハダといえば、手頃に楽しめる「光物」として寿司の定番。
コハダの産卵期は夏。
そのため稚魚も夏に生まれます。
コハダの稚魚が新子です。
実はコハダは出世魚だったのです。

コハダはお手頃に楽しめる魚ですが、新子は高級魚。
高いものだと1キロ5万円はします。

新子はコハダに比べると、柔らかいのが特徴です。
そのため新子を握り寿司にするのは、繊細な仕事です。
稚魚の輝きを損なわないように、巧みに握らなければなりません。

仕込みも大変です。
新子は小さいので、一貫に5尾つかうこともあります。
それだけ捌く手間がかかるのです。

小ささゆえにシメるのも大変です。
分刻みでシメる時間をコントロールしなければなりません。
それも、大きさ・厚さ・脂の乗りを総合的に判断してシメる時間を決めます。

実際にシメる段になったら、落とすようにして、同じタイミングでシメ始めるようにします。

高い、大変、難しい。
三拍子そろった新子の握り寿司ですが、旬を楽しみにするお客様のために夏にはご用意しています。

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シメることによって曇りのある乙な輝きになった新子を、まとめて握るには経験が必要です。
写真のように5尾握ることを、「五尾づけ」とよび江戸っ子は、これを気前が良いと言って喜びました。

厚みも大きさが違う小さな魚を、アーチ型になるように握ります。

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細部を見ても粗のない仕事を、神田わだつみは心がけています。
主に寿司を担当している馬場は、以前は姉妹店の円山町わだつみにいました。
円山町わだつみでは、女性に人気の「姫にぎり」という小さな寿司を提供しています。
「姫握り」で培った馬場の技が、新子の握り寿司でも光っています。

もともと江戸のファーストフードだった寿司ですが、時間をかけてまで新子の寿司を食べたい、というところに江戸っ子の物語を感じます。
新子は8月前半で終了してしまいます。
おはやめにご来店ください。

神田わだつみでは日本酒と日本料理の組み合わせをご提案

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鰻と新子の物語を感じていただけましたでしょうか?
今度は、ぜひ来店して味で夏を感じていただけたらと思います。

神田わだつみでは、日本酒と日本料理を一緒に楽しむのがオススメです。
今回紹介した料理にマッチする日本酒は、下記アドレスで紹介しています。
板前がこっそり教える日本酒物語 「鶴鈴」と「玉川」
合わせてご覧ください。

夏は始まったばかり。
味わい深い日本酒と日本料理で、夏を楽しんでいただけたらと思います。