板前がこっそり教える日本酒物語 「鶴齢」と「玉川」

神田で日本酒に合わせた日本料理を気軽に楽しめる神田わだつみです。
神田わだつみでは四季折々の日本料理と、それに合わせた日本酒をご提案しています。

今はインターネットの時代。
わからないことは何でも検索して、即座に解決(?)できる時代です。
日本人の「ガイドブック志向」はますます強まっているように感じるこの頃です。

「日本酒ってどうやって飲んだらよいかわからないんです」

このようなご質問もよくいただきます。
極論でお答えしてしまえば、

「好きなように飲めばいいんです。美味しいと感じるように飲んでください」

これが偽らざる本音です。
日本酒は気楽なものなのです。

しかしこのような答えでは、「日本酒の飲み方」というご注文にお応えできていません。
ご注文に全力でお応えするのが、私たちの役目。

そこで、あくまでも一例として『日本料理と日本酒の組み合わせ』をご提案しています。

異なる日本人が、異なる日本の地でつくった味が、鍵と鍵穴が合うようにぴたりとはまる瞬間は楽しいものです。
そして、その瞬間、ひとつの「物語」の扉が開きます。

今回はそんな「物語」へと皆様を誘います。
神田わだつみの日本酒は日々入れ替わっていますので、ご興味が湧いたら、お早めにお越しください。

鶴齢 「爽醇」 特別純米酒:喜びの夏の物語

ed3V5A5023

鶴齢を創る青木酒造は、300年以上も酒造りを営んでいる。
2017年、青木酒造はちょうど300回目の夏を迎えた。

青木酒造の酒造りには、「和合」の精神が込められている。
「和合」とは「親しみあうこと」。
青木酒造の酒造りに関わる人は、共に耐え忍び、助け合い、喜び合うのだ。

青木酒造の「和合」の精神は、豪雪地帯ゆえに生まれてきたという。

「良い酒をつくるための水が空からコンコンと湧いている」

そんな風に青木酒造の人たちは、厳冬にも励ましあっているのだろうか。
恨むよりも感謝。
人だけでなく、自然とも「和合」しているのだ。

豪雪地帯なだけに、夏の喜びは一塩だろう。
降り注ぐ太陽のもと健やかに伸びる稲に、今年の酒造りに期待をかけているはずだ。
盆や祭で「鶴齢」を楽しむ人々の姿を見て、酒造りの醍醐味を感じているのだろうか。

青木酒造にとって300回目の喜びの夏、彼らは一本の夏酒を発売した。
鶴齢「爽醇」特別純米。
今流行りの夏酒の一種だ。

しかし流行りに浮かれるのではなく、夏を楽しむ飲み手に、酒の味を届ける気配りが細やかだ。
まずパッケージはUVカットの袋に包まれている。
繊細な味わいが、紫外線で損なわれないようにするためだ。
見た目はレモンを思わせる朗らかな黄色。
味わいには柑橘系の酸味がほのかに感じられる。
見た目でそそられた欲求に滑らかに応えてくれるのだ。

やや辛口の味わいで酸味があるので、寿司によく合う。
魚の旨みを引き出し、シャリの旨みを濃くするのだ。

寿司のなかでも、「爽醇」は夏酒なので、新子に合わせると夏を一層感じられてよいだろう。
新子はコハダよりも脂が控えめなので、あっさりとした飲み口の「爽醇」に似つかわしい。

誕生の喜びではちきれそうな新子を、酒造りの喜びがつまった「爽醇」に合わせてみてはいかがだろう。
喜びの夏を感じてほしい。

玉川「山廃純米」五百万石(無濾過生原酒):憧れを求める物語

ed3V5A5020

「山廃仕込み」は従来行われていた日本酒造りの一工程を廃止した方法でつくられた日本酒のことだ。
「山廃」の名がつく日本酒は高い。
工程を廃止したなら安くなるのが普通だ。
しかし工程を廃止したため、通常よりも酒造りに時間ががかる。

“Time is money.(時は金なり)”はという諺のとおりだ。

玉川「山廃純米」五百万石(無濾過生原酒)をつくる木下酒造の「山廃」を語るうえで、フィリップ・ハーパーの存在は欠かせない。
20代のとき英国から日本にやってきたハーパーが、玉川の「山廃」の評判を確固たるものにした。
自然界に存在している酵母をつかった酒造りは、手間がかかるうえに品質が安定しない。
しかしハーパーは、杜氏としてそれをやってのけた。

できた酒が玉川「山廃純米」五百万石だ。
「山廃」というものは、元来、酸味のインパクトが特徴とされている。
しかしハーパーのつくった「山廃」は、特徴を残しつつ、家付き酵母らしい優しさを加えている。
日本酒の甘味をゆっくりと味わうことができるのだ。
ワインのような味のハーモニーがファンを虜にしている。

ワインのマリアージュの考え方では、甘いワインには濃い味の料理を合わせる。
ワインにならうのであれば、玉川「山廃純米」五百万石(無濾過原酒)には、甘辛いタレの付いた料理がよく合う。
例えば、夏であれば、鰻のかば焼きが季節的にもちょうどよい。

「夏には鰻を食べる」というのは、江戸時代から続く日本人の憧れだ。
「土用の丑の日」が定着してからは、高価な鰻を食べる言い訳になったのかもしれない。

このごろますます鰻が高くなっている。
輸入物も高い。
鰻の代用に鯰が使われ始めているくらいだ。
「土用の丑の日には、鯰しか食べたことがない」なんてことを言う人も現れるかもしれない。
身近な憧れが、遠い憧れになる日がいつか来そうだ。

日本酒に憧れ類稀な行動力で杜氏になったハーパーの玉川「山廃仕込み」五百万石(無濾過生原酒)を飲むのならば、身近な憧れの鰻を合わせてみてはどうだろう。
憧れが原動力のひとは強い。
「来年も美味い鰻を食べよう!」
そう思えば仕事も乗り切れるはずだ。

神田わだつみでは日本酒に合わせた日本料理をご提案

2本の日本酒にまつわる「物語」はいかがでしたか?
ここでお話したことは、いわば本の帯。
「物語」の本文は、皆様のお口のなかだけにあります。

紹介した組み合わせは、あくまでも一例です。
皆様の好みによって、紡ぎだされる「物語」を、逆に神田わだつみも教えていただきたいと思っています。
日本酒と日本料理を組み合わせた時の「物語」の発見を、一度楽しんでみてください。

神田わだつみへのご来店をお待ちしています。